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プログラム・コーディネーター 内藤 正典(グローバル・スタディーズ研究科教授)

プログラム・コーディネーター、内藤 正典(グローバル・スタディーズ研究科長/教授)

文部科学省の公募による平成24年度の博士課程教育リーディング・プログラム(リーディング大学院)複合領域型(多文化共生社会)において、本学から申請した「グローバル・リソース・マネジメント」が採択された。文部科学省によれば、リーディング・プログラム(リーディング大学院)とは「優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーへと導くため、国内外の第一級の教員・学生を結集し、産・学・官の参画を得つつ、専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した世界に通用する質の保証された学位プログラムを構築・展開する大学院教育の抜本的改革を支援し、最高学府に相応しい大学院の形成を推進する事業」である。(平成24年度『博士課程リーディング・プログラム』公募要領)

同志社大学のグローバル・リソース・マネジメント・プログラムは、地球規模の課題群(グローバル・イシューズ)を主専攻とする学生がインフラ科学、資源・エネルギー科学の工学分野を副専攻(sub major course)とし、理工学系を主専攻とする学生が地球規模の課題群を副専攻(sub major course)とする文理融合型の博士教育一貫プログラム(Advanced Doctoral Program in Global Resource Management)である。基幹研究科はグローバル・スタディーズ研究科と理工学研究科だが、連携研究科の専攻に所属する学生も一定の条件を満たせば履修が可能である。

本プログラムは、人間生活の基盤となる資源・エネルギー・インフラ科学と、地球規模の課題群を扱うグローバル・スタディーズの融合を基に「グローバル・リソース・マネジメント」という文理融合の学際領域を設定し、博士前期・後期課程を一貫した教育プログラムを構成する。強靭な精神と高度な倫理観をもって、今日、最も困難な状況にある国から、新興国までをパートナーとして活躍していくグローバル・リーダーの養成を目指すものである。本プログラムが養成する人材像とは、①災害、紛争、貧困など、生存の危機に瀕する過酷な状況にある人々に寄り添い、共に学ぶことによって困難を打開する志を持ち、②そのために必要な人文・社会科学と自然科学の諸領域を統合知として修得する学徒であり、③文理融合の知を基に、「公正」のなんたるかを意識しつつ、宗教間、民族間の共生を志向し、地球的課題としての困難の発生を抑止し、また発生した困難からの復興と発展に取り組む。④同時に、困難から脱して、発展の途上にある新興国において発展の持続性と格差の縮小に取り組むことで、これらの諸国と戦略的パートナーシップを築いていく。今日、東アジア、東南アジア、中東、中央アジアは経済成長の過程にあり、G20諸国および、それに次ぐ成長を実現している諸国は数多い。博士学位を有する高度専門職業人のキャリアパスとして、これらの地域の新興国群をターゲットとするところに本プログラムの特色があるが、その先には、困難から発展への道筋を自ら経験することにより、その知見と経験を将来の日本の発展へとつなげるという目標をもつ。新興国群、Next 11、そして最困難国(地域)には、イスラーム圏が多く含まれているが、同志社大学は、一神教学際研究センター(CISMOR)の活発な研究活動の成果として宗教間対話について、日本で最高水準の実績を誇る。

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現代世界の閉塞的状況を突破するためには、人間生活の物質的基盤(インフラストラクチャー)、社会的基盤、精神的基盤の3領域を統合的に扱う新領域の創造が必要である。そのために、同志社大学が長年にわたって高度な研究・教育実績を有する資源・エネルギーに関わる自然科学・理工学的知の体系と、多文化共生に関わる人文・社会科学的知の体系を統合した文理融合による博士課程プログラムを創造する。自然科学・理工学系からは、電力、エネルギー、情報、交通、水資源管理の領域がプログラムに参加する。人文・社会科学系からは国際的に研究をリードする多文化共生、神学、人間の安全保障、紛争抑止、平和構築、開発学、政策科学、社会福祉学等の領域がプログラムに参加する。中でも、イスラーム世界との共生をグローバルな多文化共生社会の課題として重視する点が特色である。

国の施策としてのグローバル・リーダーの養成を目的にしながらも、いかなるリーダー像を描くかという点については本学独自の方向性を打ち出している。ここでいうリーダーとは、既存の成功者をモデルとするものではない。また、一国の支配者を養成しようというのでもない。第一に、今の日本の閉塞的状況を打開するには、すでに少子化の著しい日本に留まっているだけでは難しい。インドネシア、トルコ、中国など若年人口の層が厚い新興国において互いに切磋琢磨することで、彼らのエネルギーを肌で感じ、その中からいつかは日本の再生に貢献する人材を育てたい。それと同時に、今日の世界で最も困難な状況に直面する国や地域に暮らす人びとと共に困難を打開する知恵を育み、それを実現に向かわせていく人材を養成しようとするところに、本プログラムの構想するグローバル・リーダーの姿がある。最困難国(地域)としては、本学で平和構築に取組んできたアフガニスタン、パレスチナのガザ地区など人道の危機にある地域に焦点を当てていきたい。

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プログラム履修生となるには、グローバル・スタディーズ研究科、理工学研究科、そしてプログラム担当教員が所属する研究科・専攻に所属することが必要である。留学生の場合も、この条件を満たせばプログラム履修生となることができる。学位そのものは、学生が所属する研究科の履修の定めに従って取得を目指してもらい、その上で文系の学生は理工系科目および文理共修科目から、理系の学生は文系科目および文理共修科目から、20単位以上を履修することが求められる。新興国や最困難国においては、人文・社会科学のみ、あるいは理工学のみの知識をもつ人材にできることは限られる。理工学の知識をもちつつマネジメントや社会貢献を考えていかなければ、グローバル展開を果たした企業であっても異文化との共生を実現するリーダー足り得ない。逆に、人文・社会科学について深い知見を有していても、現実の人間社会の基盤となるインフラストラクチャーや資源・エネルギーについての知見をもたなければ、人類社会の安定には寄与できない。博士課程教育リーディング・プログラム「グローバル・リソース・マネジメント」とは、これらの領域に特化して文理融合の教育を実践し、履修生が将来において多文化共生社会の実現に向けて進んでいくためのバックアップをする博士課程一貫教育プログラムである。

履修生一人ひとりが、地球市民としての貢献を絶えず意識しながら5年間の大学院の教育課程を過ごしてほしいと考えている。本プログラムでは、博士前期課程でプログラム履修生となった学生には学習に打ち込めるよう一定条件のもと、特別奨励金を給付する。このプログラムは、狭義の研究者養成を目指すものではない。博士学位をもち、持続可能な発展と多文化の共生に多様な分野で貢献する人材を育てていくことが、リーディング・プログラムの人材養成の目標なのである。