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バングラデシュにおけるAMAMIZUイノベーション―ドネーションからBOPビジネスへ―

セミナー・レクチャー

2015/1/16
グローバル・スタディーズ研究科   乾 敏恵


開催日: 2015年1月16日(金)
場所: 今出川校地(烏丸キャンパス) 志高館 SK112
演題:「バングラデシュにおけるAMAMIZUイノベーション―ドネーションからBOPビジネスへ―」
講師:村瀬 誠 氏〔株式会社天水(あまみず)研究所代表取締役,東邦大学薬学部客員教授〕

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 バングラデシュでは天然ヒ素による深刻な地下水汚染に加え、気候変動に伴う海水面の上昇やエビの養殖によって年々水源の塩害が進行している。トイレの普及が不十分なため下痢で亡くなる人もいまだに跡を断たない。さらに一日1時間以上もかけて行われている水汲みは住民にとって多大な負担になっている。現在でも安全な飲み水にアクセスできていない人口は2000万人を超えると推定されている。

 高度な水処理技術を導入すれば水質の改善は可能だが、その設置と管理には膨大な費用がかかり貧困層が多くを占めるバングラデシュの農村部ではその実施は極めて困難である。これに対し天水はヒ素や塩分、病原菌を含まず誰もがアクセスできる安全な水源であることから、2000年からバングラデシュの沿岸地域において天水活用のソーシャルプロジェクトに取り組んできた。

 バングラデシュの農村では昔からMotkaという素焼きの甕に天水を溜め飲料水として利用してきた暮らしがあった。しかしMotkaは安価ではあるものの容量が最大で100リットル程度で乾季を乗り切ることができないうえに、素焼であるため割れやすいという弱点があった。そこで温故知新の考え方でこの課題に挑戦し、2011年に安価で容量が1000リットル、かつ強固なモルタル製の甕を開発した。これはタイ国の農村で一般的に活用されてきた甕の製造技術をバングラデシュに移転することによって実現した。地産地消の考え方を活かして開発したモルタル製1000Lの甕の名を“AMAMIZU”と命名、2012年にはAMAMIZU生産センターを開設し、JICAと協働で貧困層を対象としたソーシャルプロジェクトが開始した。

 AMAMIZUの普及にあたっては、事業の持続可能性を確保するためにドネーションに依存するのではなくビジネスの手法を取り入れた。すなわち、現地での住民が購入可能な値段や水コストに関するベースライン調査をもとに当初の販売価格を4300タカ(甕、雨どいの材料費や設置、運搬費を含む)に設定するとともに一人でも多くの貧困層が手に入れられるように分割払い方式も採用した。2012年に設置した200基に関してはほぼ100%完済された。今後は小規模なAMAMIZU生産センターの暖簾分けを進め、ソーシャルフランチャイズ化し、新たなビジネスモデルを構築していく。

 このAMAMIZUソーシャルビジネスでは、バングラデシュの住民の水に関するニーズや文化、そして村瀬氏のすべての人に安全な飲み水を送り届けるという熱い思いとアイディアが上手く融合された良い例のひとつであると感じた。さらに村瀬氏は、AMAMIZUのソーシャルビジネスをBOPビジネスモデルの構築にとどまらず地域の産業化への道 を考えておられ、非常に感銘を受けた。天水ビジネスによるバングラデシュの人々の生活の向上や地域の発展を期待したい。


※講演にて、雨水を単なるモノとして捉えるのではなく、天からの恵みとして捉えるという観点から「天水」と表記されていたため、「雨水」ではなく「天水」と表記した。


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