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ミャンマー、「最後のフロンティア」のいま

研究活動・その他

2013/4/10
グローバル・スタディーズ研究科   西 直美


「ミャンマーと中国をつなぐ石油パイプライン(シャン州)」


ミャンマーは、インドと中国というふたつの大国に国境を接し、東南アジア大陸に位置する多民族国家である。長らく軍事政権下にあったミャンマーが自由化して数年、その変化のスピードには目をみはるものがある。資源獲得競争が激化するなか、各国がミャンマーの資源に注目している。ミャンマー中部マンダレーから北部のシャン州ラーショーにかけ、かつて「援蒋ルート」が存在した地域に、中国がパイプラインの建設を行った。中国は海上ルートのリスクを減らす目的から、資源輸送路の多角化に力を入れている。二大大国に挟まれたミャンマーの動向は、これからの国際関係を占うものでもある。かつても今も、国際政治の戦略上欠かすことのできない要衝に位置しているのである。

 
「969運動」

ヤンゴンの街角で自転車の修理をする男性たち。その後ろには、菊のようなかたちをした仏教のシンボルマークが見える。仏教国らしいミャンマーの日常風景の一コマである。マークの上に貼られているステッカーをご覧いただきたい。今世紀に入ってから拡大を続けてきた「969」なる運動のシンボルである。969運動の指導者的存在であるウィラトゥ師は、反イスラーム暴動を煽った仏教徒テロリストとして、タイム誌で報道され話題となった。969自体は仏教の教えを数字化したものであり、ミャンマー国民に仏の教えを分かり易く伝えるためのものであるという。一方、イスラームの786に対抗したものであるともいわれ、969運動の背景にはイスラームに対する反感の高まりが存在していることは確かである。


 「放棄されたモスク(メイクティラ)」

ミャンマー中部のメイクティラでは、2013年3月、西部ラカイン州で生じた反イスラーム暴動が飛び火するかたちで、ムスリムの経営する商店やモスク、家屋が襲撃された。ミャンマーには、イギリスの植民地時代にインドやバングラデシュから移住してきたムスリムが存在したが、軍事政権下において人口が激増したとされる。ミャンマー人仏教徒のあいだでは、仏教国であるミャンマーをイスラーム化しようとしているとして反感が高まっていた。モスク正面に掲げられている786は「神の名のもとに」というコーランの一節を数字化したものとされ、ミャンマーではイスラームを象徴するものである。



「タウンピョンのナット(精霊)祭(マンダレー郊外)」

タウンピョン祭は、毎年夏に1週間ほどかけて盛大に祝われるミャンマー最大の神事である。ミャンマー全土から神々と、神々と人をつなぐ第三の性の者たち、そして信者たちが集う。人々が供える供物は、十数トンにもおよぶという。仏教国のイメージが強いミャンマーであるが、日本と同様に多くの神々が民衆の信仰を集めている。それらの神々は、土地の伝説であったり歴史上の実在の人物であったりする。タウンピョン祭の中心的存在である2人の兄弟神は、皮肉なことにムスリムであるともいわれている。めまぐるしく発展を遂げ、世の中は変わっても、人々の神々に対する愛着は健在である。民族紛争や宗教対立を抱えるミャンマーであるが、多様なものが共存しあい独自の文化を形成してきた歴史が確かに存在しているのである。

(GRM Newsletter Vol.1より転載)