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ASEAN Connect 2017: Forum on Extension in Higher Education

研究活動・その他

2017/9/30
グローバル・スタディーズ研究科   大橋 佑


1. 報告書概要
 本報告書は、筆者が2017年9月20日~24日にかけてフィリピン共和国(以下フィリピン)に渡航し出席した国際会議「ASEAN Connect 2017: Forum on Extension in Higher Education」(以下ASEAN Connect 2017)での活動内容およびその成果の報告である。ASEAN Connect 2017は、ASEAN域内における高等教育・研究機関の現状課題および今後の発展の在り方について議論を行うものである。本報告書は以下、学会概要、活動概要、発表内容および成果概要についての報告をもって構成するものとする。

2. 学会概要
 ASEAN Connect 2017は、ASEAN東南アジア諸国連合ジャカルタ本部により承認され、アジア太平洋研究者・教育者コンソーシアムのほか、フィリピン州立大学連合、大統領府、教育省、科学技術省、情報省、高等教育審議会の後援により、Polytechnic University of the Philippines (以下PUP)が主催して行われた会議である。本年2017年がASEAN創立50周年にあたる記念年であること、また本年のASEAN議長国がフィリピンであることから、本会議にはジャカルタのASEAN本部からASEAN事務次長が出席し、また本会議はASEAN本部によりASEAN教育諮問会合として認定されている。本会議はASEAN教育諮問会合のうち高等教育を諮問するものとして行われており、本年は「One ASEAN, One Framework, One Network」のスローガンの下、社会開発、経済開発、資源エネルギー開発、環境保全、自然災害や紛争等の危機的事態への対応を中心的テーマとして、ASEAN域内各国の代表的な教育・研究機関がいかなる教育活動、実践的活動を遂行してきたか、各大学の学長級、博士号を取得した教員の研究発表により情報の共有と大学間ネットワークの強化を議論・交渉する国際会議・学会である。

3. 活動概要
 筆者は本会議に、主催者であるPUP側からの依頼により招待講演者として出席した。PUPの主催者の要請では、ASEAN域外の教育・研究機関の事例紹介のため、また戦後の社会経済の成長とともにアジア地域で特に急速に高等教育を発展させてきた日本の経験を、世界屈指の成長が見込まれるASEAN各国の機関に共有してほしいというものだった。特に筆者に求められていたテーマは、資源エネルギー開発上の課題、環境保全問題、自然災害を中心とする人道の危機の課題解消に、日本の教育・研究機関がいかに向き合ってきたかというものであった。ASEAN域外からの招待参加者は、筆者のほかにインド共和国政府の地方開発研究所の人的資源管理局の局長を務める研究者の方が出席していた。

4. 発表内容
 筆者の発表は発表に45分、質疑応答に15分の時間が設けられていた。発表は「Extension Model in Japan: Environment, Disaster Risk Reduction, Climate Change and Energy Experience」と題して行った。初めに同志社大学、所属するグローバル・スタディーズ研究科および博士課程教育リーディングプログラム「グローバル・リソース・マネジメント」についての説明の後、「Situation of Higher Education Institutions (HEIs) in Japan」と題して、日本における高等教育・研究機関の概要等について報告をした。ここでは明治維新後からの旧帝国大学の発展、また第二次世界大戦後の復興期、社会経済の急速な成長期におけるHEIsの発展と国家・社会において有してきた機能等について、国内GDPと大学・研究機関の所在数の推移データから説明をした。また急速な開発とともに生じた近現代の諸課題の内、石油危機によって明らかになった資源エネルギー問題、四大公害病等により深刻な社会問題となった環境保全管理の課題、社会の成長とともに被害が拡大してきた自然災害の課題に対して、日本国内の大学・研究機関を中心としたHEIsがいかなる対応を取ってきたかについて詳細な言及をした。
 また現代的な課題として、日本国内の大学・大学院におけるASEAN域内諸国からの教員・留学生の受け入れに関する現状の報告に加えて、1980年代~2010年までの、世界の科学技術分野における学術論文の引用件数の国別推移についてデータとともに言及し、日本が成長する中国・韓国のHEIsとの過酷な競争環境にあることを説明した。日本のHEIsは、高度経済成長期までは国家官僚の養成や経済開発のための知見及び技術の集成を行うプラットフォームとしての機能が中心的であった。しかし高度経済成長の陰り、石油危機に起因する資源エネルギーの依存課題、食糧自給、環境保全、脆弱性の増大による自然災害の規模・被害の拡大等が契機となり、HEIsに求められる役割は、次第に人間の安全保障概念や社会開発への貢献へと移行していった。日本政府や国内各大学・研究機関、国連機関、国際機関の報告書等をもとに言及を行った。
 日本におけるHEIsの現代的課題への対応として、先端を行く教育プログラムの一つが博士課程教育リーディングプログラムである。同志社大学「グローバル・リソース・マネジメント(GRM)」で行ってきた国内外の諸活動を事例に、東南アジア諸国が今後如何にして高等教育、高等研究を発展していくことが出来るのか、また今後の同志社大学GRMと各国機関の協働の可能性を提示した。GRMの活動として、フィリピンの巨大台風被災地域での活動や、東日本大震災被災地域での調査研究活動、中東・欧州での難民の流入を機に生じた新たな危機への対応について、自身の経験から事例を紹介した。

5. 成果概要
 本報告への反響は非常に大きく、発表の様子はフィリピン全国紙と全国テレビで報道された。会議内外で同志社大学GRMとの将来的な大学間協力関係の確立に向けた依頼や、東南アジア諸国の各政府、大学・研究機関が行っている社会開発、人道の危機の解消のための事業への協力依頼が非常に多く寄せられた。来年以降のASEANの会議や各大学で行われる国際学会への招待も多くいただき、自身の研究活動における非常に貴重なネットワーキングの機会となった。本会議での貢献により、主催者・後援機関より感謝状・表彰状と友好記念の盾・トロフィーを頂き、HEIsの一層の発展のための宣言書に署名しASEANに提出した。


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参考:ASEAN Connect 2017
https://www.pup.edu.ph/events/?go=8p53kWed9vw%3D