2025年10月8日、Seminar for Advanced Liberal Artsの一環として、長年外交の最前線で活躍され、サウジアラビア大使なども歴任された上村特使をお招きして、「激動する中東の地政学」と題した特別授業を開催しました。

講演ではまず、日本人のアイデンティティが「日本人」という単一の枠組みで語られることが多いのに対し、
MENA地域の人々は宗教（religious）・民族（ethnic）・国家（nation）という複数のレイヤーでアイデンティティを形成している点が強調されました。
これらの重層的なアイデンティティは、時に協調を生み、時に対立を引き起こす要因ともなり、地域の政治・社会情勢に大きな影響を与えています。

さらに、MENA地域はアジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸が交わる地理的要所であり、豊富な天然資源や重要な海上水路を有することから、地政学的にも極めて重要な位置を占めています。
これらの要因が複雑に絡み合い、中東情勢を一層不安定かつ多面的なものにしていることが、講演を通じて明らかになりました。 今回の講演には中東地域出身の留学生も多数参加し、自身の実体験や個々の視点を交えながら、講演内容に対する意見や疑問を積極的に共有しました。

宗教や民族、国家のアイデンティティが日常生活や社会との関わりにどのように影響するかについて、具体的なエピソードを通じて語られ、参加者間で活発な意見交換が行われました。
これにより、講演は単なる知識の共有にとどまらず、異なる背景を持つ人々が互いの理解を深める貴重な対話の場となりました。