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GRMグローバル・リーダーシップフォーラム「アフガニスタン情勢 タリバン制圧と今後の課題」開催報告

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2021/11/30

講師:山本忠通氏(同志社大学客員教授・元国連事務総長特別代表(事務次長)・前国連アフガニスタン支援団(UNAMA)代表)
開催日:2021年11月18日(木)
時間 :14:55-16:25(4講時)
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本大学客員教授で元国連事務総長特別代表(事務次長)・前国連アフガニスタン支援団(UNAMA)代表の山本忠通氏を講師に迎え、本学学部生ならびに大学院学生を対象としたフォーラム「アフガニスタン情勢 タリバン制圧と今後の課題」を開催しました。このGRMグローバル・リーダーシップフォーラムは、世界のリーダーとして社会が直面する重大な課題に取り組まれた方々を講師にお迎えし、そのご経験と深い知見について教授いただくものです。今回のフォーラムは、他大学の大学院生を含む120名以上の参加申し込みがあり、大変な関心の高さがうかがえました。
山本先生には、5年半にわたって平和構築の最前線ともいうべきタリバンとアフガニスタン政府の双方と対話を続けられた経験を基に、ここ数か月に起こった激動についてお話しいただきました。さらに、20年におよぶ国際社会の支援がこのような結末を迎えた背景と、今後の国際社会とりわけ日本はどのように対応すべきか、幅広くお話しいただきました。
 
中でも「たしかに軍事的な紛争はタリバンの勝利に終わったが、国際社会はそこから手を引いていいわけではない。紛争の終結は政治的プロセスの区切りだが、そこで終わりではなくその後もずっと続く。まだ交渉は終わっていない。」というお話しが特に印象的でした。
アフガニスタン政府が崩壊し、タリバンが勝利したのはアメリカ軍の撤収だけが原因ではなく、選挙による民族分断や深刻な貧困、政府の腐敗と汚職、タリバン側の戦略など様々な要因が複合して起こったことや、国際社会が掲げた和平交渉の目的の一つには、アフガニスタンに安定した政治体制を築くことがあったが、それは必ずしも西洋の民主主義システムとは限らない。というお話しには宗教間、民族間の共生社会を実現することの難しさを感じ、いま、世界で現実に起こっていることを深く知る機会となりました。
 
後半は、今後の国際社会の対応についてお話しいただきました。タリバンを敵視し崩壊させるのではなく、将来のアフガニスタンを一緒に作るパートナーとして相互の信頼関係をどのように構築するかという考えが重要である。タリバンが信頼に足る存在であると国際社会が認め、タリバンもまた国際社会に認められる努力と譲歩を示さないといけないが、相互信頼への道はまだ遠い。その中でアフガニスタンの主要関係国とも関係が良好で、国連でも大きな影響力を持つ日本が果たすべき役割は多い。しかし、外交は全てプライオリティに基づく選択であり、どれを優先するかは政治的判断が介在する。日本政府がアフガニスタンにどれだけのお金と時間と政治的関心を払うことができるかが重要なポイントである。というお話しには、参加者は一様に聞き入っていました。
 
最後に今後の平和構築に向けた反省と教訓として、「これまで150兆円もの資金を使ったのに、なおも2200万人もの人が貧困にあえいでいる現実がある。理想を掲げるのは大変重要だが、一足飛びには実現しない。その国の人にとって何が最も大切なのか、達成可能な目標をセットしなくてはならない。国連の平和構築ミッションは完全な失敗ではないが、残念ながら思ったようにいかなかったと言わざるを得ない。」とご自身の経験に基づき率直に語っておられました。
 
講演後の質疑応答では、参加者から、タリバンに新政権でも活躍できる女性は存在するのか、パキスタンなど周辺イスラム教国家が意味ある関与ができないのか、タリバン政権がうまくいかなかった場合の今後のシナリオなどさまざまな鋭い質問が寄せられ、予定の時間ぎりぎりまで活発な質疑が行われました。
GRMプログラムは「世界で困難な状況に直面する国や地域に暮らす人びとと共に困難を打開する知恵を育み、それを実現に向かわせる人材を養成する」ことを掲げており、それにふさわしいフォーラムになりました。参加者は今回のフォーラムを契機に国際社会の出来事や多文化共生社会の実現により関心を持ってくれることを期待しています。