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オンサイト実習(宮古島)
2014/04/29
実習日:2014年4月29日(火)~5月2日(金)
場所:沖縄県宮古島市
プログラム・コーディネーター 内藤 正典 教授
GRMプログラムが掲げる現場から知を育む試み。そのなかで理工学研究科を中心に、インフラと資源について考えるのが宮古島でのオンサイト実習である。国内での実習は、これまで2013年春のキックオフ・オンサイト実習を宮古島で実施し、同年夏には北の離島である利尻島での実習も行われた。今後は、春の宮古島実習を履修候補生とPE試験通過生にとってのキックオフ的な意味をもたせて継続していく。QE試験後の履修生は、これに先立つ3月実施を慣例としていく海外でのオンサイト実習(2014年3月はトルコ、2015年3月はフィリピンを予定)で、いよいよ新たな文理融合の知を構築していくことになる。
2014年宮古島での実習は、第一に、電力インフラについての見学と実地調査、第二に孤立した水利システムでの水資源管理を中心に学んだ。2013年に引きつづいて、沖縄電力の協力により、宮古島での発電・送電システムについて学んだうえで、国(経済産業省資源エネルギー庁)のモデル事業である宮古島メガソーラー実証研究設備を見学し、太陽光発電と風力発電の可能性と課題について現場から多くの知見を得た。特に、再生可能エネルギーについては、今日、大きな期待が寄せられる一方で、高度な産業社会においてどのように位置づけていくかは課題も多い。電圧と周波数管理の課題などを理工学研究科の電気・電子工学の教員と沖縄電力のエンジニアが丁寧に説明し、人文・社会科学系の大学院生は新鮮な感覚で知見を得た。
今年度は、インフラ工学に加えて、宮古島の環境保護と開発も一つの課題として取り上げ、宮古島市役所農林水産部水産課の梶原健次博士が、島の周辺におけるサンゴ礁の実態と保護の課題について現場で観察の機会をつくってくださった。自然環境、エネルギー資源利用の現実は、ともすれば文系の大学院生にとっては、実態と乖離した言説の世界で論じられることが多い。宮古島での自然環境、エネルギー、インフラ工学に関する実習は、リーディング・プログラムの初年次にあたる修士1年次生(履修候補生)、修士2年次生(PE)にとって、理工学研究科の履修生と寝食を共にして学ぶ最初の機会である。また、人文・社会科学系の教員と理工学研究科の教員がかなりの長時間にわたって、互いの知見を交換する機会ともなっている。今年度は、新たにスタッフとして加わった文系のプログラム・オフィサー岩坂将充准教授がプログラムの進行を確認しながら全体像の把握につとめた。
文理融合というのは、言葉では言い古された感があるが、現場で眼と耳を研ぎ澄ますことによって得られる知見は実に豊富である。宮古島には山がない。山がないということは、川もない。したがって、「水」という資源は自然の降水に頼らざるを得ない。かつては個々の家で天水を溜めてきたのだが、現在では市の水道システムが全島に整備されている。この水道にしても、サンゴ礁の島である宮古島では降った雨はサンゴ礁の層を浸透してしまうから、その下の不透水層で止めなければ海に流出してしまう。飲料水としてつかう上水道と農業用水として利用する水の双方について、別個の貯水・給水システムを構築している宮古島の水資源管理は、孤立した資源管理システムをどのように維持管理するかという知見を提供してくれる。なかでも、地下ダムという独特の技術を活かしている灌漑システムは、世界の離島のみならず、乾燥地域での限られた水資源の活用方法としても優れていることを学んだ。
今回、宮古島の下地敏彦市長とも懇談し、宮古島市とGRMプログラムとの間で包括協力協定を締結し、本プログラムの応用と展開を地元産業界とも検討していくことにしている。
(実施期間:2014年4月29日~5月2日)
(GRM Newsletter Vol.1より転載)
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スケジュール
<1日目>
・宿舎にてオリエンテーション
・講義 ""Introduction to a Renewable Energy System" 和田元 教授〔理工学研究科〕
・講義 "Island Power Development for Palawan, Philippines" Ivan B.N.C.Cruz氏〔フィリピン大学助教〕
<2日目>
・宮古島メガソーラー実証発電施設見学
・大潮に関する野外講義 サンゴ礁観察
・講義 "Development and Standardization of Smart Grid and Smart Community in Japan" 合田忠弘 客員教授〔理工学研究科〕
・講義 「新エネルギー発電と蓄電池技術」 長岡直人 教授〔理工学研究科〕
・講義 "Reflection of World Development" 小山田英治 教授〔グローバル・スタディーズ研究科〕
<3日目>
・野外講義 "Geograhical and Geological Outline of Miyako-jima Island" 林田明 教授〔理工学研究科〕
・宮古島市地下ダム資料館、宮古島市袖山浄水場見学
・宮古島市上下水道部訪問
講義 「太平洋島嶼への宮古島市水道技術移転」 梶原健次 氏〔宮古島市農林水産部水産課課長補佐・水産振興係長〕
・講義 「無限の可能性の追及と社会貢献を目指して」 有吉大助 氏〔株式会社正興電機製作所〕
<4日目>
・宿舎にて発表、総括討論