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オンサイト実習(トルコ)

実習日:2014年3月5日(水)~12日(水)
場所: トルコ イスタンブール、キリス

プログラム・コーディネーター 内藤 正典 教授
2014年3月、GRMプログラムではトルコへのオンサイト実習を実施した。プログラム・コーディネータとして、この実習は、プログラムの構想を描いたときから暖めてきたもので、走り出してから最大のイベントでもある。GRMを申請し、採択されたのは、複合領域の「多文化共生社会」という分野である。多文化の共生を考えるとき、中東という地域はもっとも適した題材を提供してくれる。必ずしも良い意味ではない。実に多様な民族、宗教、宗派が混在して暮らしながら、およそ国境というものは彼らの空間的領域を反映していない。そのために、一つの国のなかに多様な民族や宗教の集団が混在することになり、しばしば、異なる民族、異なる宗教、異なる宗派のあいだで衝突が起きてきた。実際、トルコや近隣諸国の国境線は、1916年のサイクス・ピコ協定や第一次世界大戦終結時のセーブル条約(1920年)、ローザンヌ条約(1923年)にもとづくところが多い。これは何を意味するか?この辺りの国々の領域を定めたのはイギリスとフランスであり、別の言い方をすると第一次世界大戦の勝者であった。敗れたオスマン帝国はずたずたに切り刻まれ、アラブ地域は独立する機会もなく、フランスやイギリスの直接統治、委任統治の下に置かれた。

オンサイト実習ではイスタンブールとキリスを訪れた。イスタンブールでのプログラムのなかにユダヤ教ラビとの対話があった。オスマン帝国の首都だったイスタンブールは、それこそ多文化共生の都でもある。ユダヤ教、キリスト教、イスラームという三つの一神教の信徒はすべてこの都に今も暮らしている。周りを多数のムスリム(イスラーム教徒)に囲まれて怖くないのか。ラビは何も恐れることはないと言う。イスラエルが建国したのは第二次世界大戦後だが、この地にいるユダヤ人の多くは16世紀にスペインから大規模に追放された人たちの末裔である。イスラーム帝国だったオスマン帝国は、キリスト教世界を追われたユダヤ教徒を受け入れた。20世紀に入ると、この地域に古くから住んでいたキリスト教徒のアルメニア人とトルコ人とのあいだに激しい衝突が起きた。アルメニア人の多くはシリアに追放されその途中で犠牲になったが、実は今もイスタンブールに暮らすアルメニア人はいるし、彼らの教会も残っている。

外からは、あたかも水と油の関係のように言われ、共存など不可能であるかのように言われても、現実には、隣人として暮らし続けてきた歴史の方が長いのである。この街にユダヤ人がいる、アルメニア人がいる―この現実から共生の知恵を学ぶことが今回のオンサイト実習最大の目的だった。

さらに、私たちは今日の世界における最大の悲劇を垣間見ることになった。シリアとの国境キリスのシリア難民キャンプへの訪問である。シリアでは今世紀最悪の人道の危機が起きている。内戦は3年におよび20万以上の死者と200万を超える難民が発生している。北部最大の都市アレッポから近いキリスには数十万の難民がシリアを逃れて暮らしている。現地で救援活動を続けるNGO(Kimse Yok Mu)が私たち一行のプログラムを用意してくれた。GRM履修生も、教員も、事務職員も、みなNGOのメンバーとともに、車に分乗して必要な物資を配った。シリア政府軍の攻撃で重傷を負った人たちを収容する病院も訪問した。悲惨な状況は眼を覆うばかりであった。短い時間ではあっても、内戦の惨禍を目の当たりにすることから、これを解決に導くための知恵、少しでも苦痛を緩和するための知恵を生み出す。困難に直面する人びとに寄り添い、現場から、新たな知の体系を構築することこそGRMプログラムの目的である。
(実施日:2014年3月5日~3月12日)
 
(GRM Newsletter Vol.1より転載)

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スケジュール
<1日目>
関西国際空港発

<2日目>
イスタンブール着
・ユダヤ人コミュニティ主席ラビ(Hahambaşılık)İshak HALEVA氏とのミーティング
・アルメニア正教会訪問
・スルタンアフメトモスク(ブルーモスク)訪問
・講義 Ismail Taspinar准教授〔国立マルマラ大学神学部宗教史〕

<3日目>
・シリアカトリック教会Yusuf SAĞ大司教猊下とのミーティング
・ワークショップ(理工系) "Electrical power supply infrastructure in and around Turkey"
・ガジアンテップでのフィールドワーク事前学習
 講義「シリアの現状とトルコにおけるシリア難民」 Gokhan Bacik准教授〔アンカラIpek大学〕

<4日目>
キリスへ移動
シリア人難民キャンプにて
・NGO(Kimse Yok Mu)のスタッフと共に難民シェルターへ支援物資配布参加、Kimse Yok Muが行う難民への食料提供見学
・シリア人学校訪問、教師へインタビュー
イスタンブールへ移動

<5日目>
・マルマライ・プロジェクト勉強会
プロジェクト概要の説明〔福本伸治氏(大成建設株式会社)〕、マルマライ地下鉄駅舎の見学

<6日目>
・GRMラウンドテーブル"Democratization Process in the Muslim World: Expectations and Apprehensions of Muslims"
【共催】GYV(Gazeteciler ve Yazarlar Vakfı=作家ジャーナリスト協会)
【講演者】Associate Prof. Ihsan Yilmaz (Fatih University),Dr. Sahin Alpay (Bahcesehir University)

<7日目>
・宿舎にて(総括)会議
イスタンブール発

<8日目>
関西国際空港着
 

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