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国際の平和と安全-内側から見た安保理
2014/07/23
GRM Lecture Series
開催日:2014年7月23日(水)
場所:今出川校地(烏丸キャンパス) 志高館 SK119
講師:後藤 裕史 氏〔国連事務局政務局安全保障理事会部官房課政務官〕
司会:位田 隆一 教授〔グローバル・スタディーズ研究科〕
後藤裕史氏は、京都大学法学部卒業で、英国留学、民間企業勤務を経て国連競争試験合格、という経歴の持ち主であることから、まずはじめにご自身が国連安保理職員になるまでの道程が説明された。実際の職員としての必須の能力として、英文での報告書をまとめる等の仕事がきちんとできることが重要であることが紹介され、国連職員という仕事がこれからの若い人たちにとって、一つの職業選択肢として考慮するに値する仕事であると激励があった。
後藤氏によれば、安全保障理事会の事務局は、会議の準備・運営や文書の作成、非公式会合の調整等が仕事であるが、会議で闘わせられる平和と安全の維持の問題の裏側では、事務局の手になる様々な調整が実際の平和の実現の方向付けに重要な役割を果している。現実の安保理の活動は、必ずしも決議のみが重要なわけではなく、多様なレベルでの対応があり得る。常任理事国と非常任理事国の軽重については、それぞれの決議や声明等の準備過程において、常任理事国(P5)が実際に果たす役割は大きく、他方で非常任理事国はP5に比べて決議等を起草したり調整したりする能力に不十分なところがあること、など、安保理の現実の意思決定プロセスが明らかにされた。
最後に、メディア等で安保理が武力衝突の解決等に効果的な動きをしていないと批判されることについて、メディアに現れるのは安保理の活動のわずかな部分であり、総体的に安保理は可能な限りのことを行うよう努めている、ことが紹介された。
質疑応答では、安保理の活動の正当性や非公式会合の雰囲気、日本が理事国になることの意義などの質問があり、後藤氏から丁寧に回答があった。
この講演は、安保理の活動について、事務局の視点から、通常では知ることのない側面が明らかにされ、グローバル社会における国連の役割について省察する貴重な機会であったとともに、これから国際社会でリーダーとして活躍しようとする若い人たちにとって、力強いエールが伝わるものであった。(位田隆一)