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対談「国際機関でのキャリアを考える」

対談 「国際機関でのキャリアを考える」

[対談者]
横田 未生 氏
〔国連開発計画(UNDP) 民間セクター開発スペシャリスト(2007-2011,2013-2014)〕
中田 眞佐美 准教授
〔GRMプログラム・オフィサー,高等研究教育機構 / 国連教育科学文化機関(UNESCO) 科学プログラムスペシャリスト(2004-2014)〕

(2014年12月20日 GRM説明会にて)

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(以下、敬称略)

中田 みなさん、こんにちは。これから「国際機関でのキャリアを考える」というテーマで話をしていきますが、今日取り上げるのは、たくさんある国際機関のうち私たち二人が勤めた経験のある国連機関です。同じ国連に勤めたといっても、横田さんは文系、私は理系の出身です。GRMというのは文理融合の理工学とソーシャルサイエンスの分野にまたがったプログラムで、文理双方の学生が学んでいますが、そういう視点からも話をきいてもらえればと思います。

横田 こんにちは。今日は、みなさんが同志社大学の大学院でGRMを学んだ後の進路、キャリアの1つの例を私の経験を通じて、お話できればと思います。
私は、最初は非常にイメージ先行で国際機関で働きたいと思っていたため、そのために何をすればよいか、つまりゴールから逆算して考えました。まず、学部(京都大学)で経済学を学び、その後、アメリカの大学院に進学して経済・社会開発のマスター学位をとりました。その後、コンサルティング会社のリサーチャー、JICAを経ていまの国連開発計画(UNDP)で仕事をするようになりました。これまでにフィリピン、モンゴル、パキスタン、エチオピアで仕事をし、そして今、東京にいます。この過程の中で国際的な開発の現場で経験を積み、自分のキャリアを形成してきました。これまで、最も長く携わってきたのは貧困削減、特に中小零細企業の振興、生計向上、マイクロファイナンスなどの分野です。ただ、実際の現場で仕事をしてみると分かるのですが、国際機関の仕事は、決して一つの分野だけにとどまりません。特にUNDPは、ニューヨーク本部の他に世界140カ国以上に国事務所や地域支援センターがあって、それぞれやっている内容が異なります。高度に政治的な、世界の開発の枠組みを決める交渉に関わる職員もいれば、国事務所で実際に現地の方々の生活の向上に携わるプロジェクトを回していく立場の職員、経理、人事、総務など他の組織でもあるような仕事をする方もいます。これまでの私の仕事は、現場でプロジェクトを回すことを主に担当していました。仕事は専門の経済開発分野で、主なフォーカスは貧困削減だけれども、実際に現場で仕事をする時には、そこに防災の要素が入ってきたり、保健とか環境関係、気候変動もからまってきたりという、その他の分野の問題と切り離すことができない状態で仕事をしています。

中田 私は、横田さんとは逆で、東京工業大学で博士学位をとり、研究者でいたいと考えていました。ポスドクもその分野で太陽電池の研究で博士学位を取り、日立研究所でデバイス研究をしていました。そのうち、太陽電池の研究をしていたので技術だけでなく政策も勉強したいと思い、大学院(マスター)に戻ってエネルギー政策を勉強したのです。そうしたら、意外と面白くて、そのままエネルギー政策の分野の研究所に残ることになりました。そこで研究をしていた時にユネスコが、エネルギーの技術と政策、両方をわかる人を探していて、それに応募、ユネスコに11年いることになりました。自分がやりたい政策と技術をあわせた仕事の場所が、偶々ユネスコ(UNESCO,国際連合教育科学文化機関)だったのです。
サイエンスのバックグラウンド、エネルギー政策と技術を知っているということで、UNワールドソーラープログラムのマネジメントでユネスコに入りましたが、それは多くのプロジェクトのうちの一つですので、他の仕事もしました。主にサイエンス分野で地元の大学との共同研究を立ち上げる、政府のエネルギー政策をつくるお手伝いをする仕事を中心にやってきました。横田さんと入り方が大分違いますね。

横田 私は、何となく最初に国際機関への就職というイメージがあって、そのイメージにたどりつくために何をすればよいかというところから考えて、学部から修士に進み、大学院の専攻など進路を決めた気がします。
国際機関の場合、すべて任期付の採用です。ある一定の年数、それほど長くない1年、2年くらいのスパンの契約で、延長をするか、どこか別の場所・機関の仕事を探してくるか、自分でキャリアパスを切り拓いていかないといけない状況です。したがって、自分に何が足りないか、次にどこかにいくためには何をしないといけないかを常に考えて動く必要があります。もちろん、流れにのるということもあるにはありますが。
パキスタンでの仕事を選んだ時も、それまではフィリピンとモンゴルといったアジアの比較的治安が安定している国だけでの勤務だったので、次は紛争地域での現場の経験を積みたいということで移りました。また、パキスタンからエチオピアに動いた時も、アフリカでの長期勤務経験が自分のキャリアを切り拓いていくために必要ではないかということが念頭にありました。こういうように常に主体的に動いてきました。国際機関で仕事をする場合、辞めるまでこのような姿勢を続けないといけないので、そういうモチベーションを持ち続けられるかどうか。また、基本的には自分の生まれた国以外の違う文化の中で仕事をすることになるので、やりがいはある仕事だけれども、それなりにストレスもフラストレーションもたまる環境におかれ続けることになります。それでも続けられるかどうか、それくらい好きな仕事かどうかというところになろうかと思います。
今振り返ると大学院で勉強して、そのベースができたのかなと思うことがあります。GRM(大学院)で学ぶみなさんも一定の期間、そこで勉強して、そこで身につけたことを外に出て何かに使わないといけない、それでは、何に使うために自分は何を勉強するのかということを意識しながら勉強すると非常にいいのではないかと思います。

中田 大学院は専門家をつくるところです。しかし、実際にそれを役立てる、社会で使うとなるとプラスαの部分が必要です。そのプラスαの部分は、自分でどんどん積み上げていかなければならないということを、学校として教え学ぶ機会を与えてくれるのがGRMプログラムであるのではないかと思います。理系の専門家としてこの世界に入った立場からいうと、どんどんプラスαの部分が増えていって、いろんなところで働けるように、どんな場面でもすぐ活動できるように、どんどん増やしていくことが必要です。しかし、一方で、自身の専門性の部分を失いつつあるのではという気がすることがあります。最初に研究者をめざした人は、ある程度、そこのところ、つまり、自分の専門でない分野のところで働く、専門性を失うかも知れないという覚悟が必要かなと思います。逆にいえば、自分の専門性はもっていて、それを捨てても次のところにいけるというフットワークのよさも必要ではないかと思います。そのへんは葛藤もありますけれど。

横田 中田先生が勤められたユネスコは研究をされる機関なので仕事における研究の比重はまだ結構あるのかもしれません。私などは、国事務所で現場のプロジェクトを回していく立場だったので、専門的な最先端の知識はそこまでもっていなくても、むしろなんとかなる。そのような知識が必要とされる場合には、コンサルタントという形でその分野の専門家の方にきていただいて、それをはめ込んで、組み立てて、限りある予算の中で予算執行年度内に、これだけやりますと成果を出すのをマネジメントするということが、UNDPのカントリー事務所で求められることです。

中田 やっていることが違いますね。

横田 組織ですし、もちろん人事や経理関係の仕事をしている人もいます。開発の現場とは関係ないところにいるけれども、国際機関のシステムの一部として働いていることになります。ある意味、普通の会社組織と同じで、これをやらないと入れないとか、これをやれば入りやすいということはなく、どういう入り方もできるけど、そこで常に自分のキャリアのコアとなる部分を、どこで、いつ見つけるかということ、またそのコアの部分に対して絶え間なく知識や技術をブラッシュアップしていく、最後までそれを続ける気持ちがあるかということに尽きると思います。中田先生の場合は、専門的な研究分野に入るし、私の場合は、マネジメント能力とかコーディネーション能力の比重が大きいと思います。

中田 ユネスコの場合、多くの職員はプログラム・スペシャリストという名称で、科学部門のオフィサーはほとんどの人はPh.D.をもっている専門家です。仕事をする相手が大学の先生だったり、専門家だったりするので、そういう方と仕事をするとなると、それなりの学位、専門性がないと対等に仕事ができません。同じユネスコでも文化だと、また違います、ましてや、他の国連機関ではかなり状況が違ってくるということです。
さて、まだまだ話を続けていたいのですが、残念ながら時間も限られていますので、今日はここまでとします。一口に国連機関といっても、全く違う種類の仕事があり、キャリアの切り口、また、入り方はいろいろあるということを私たちの経験をもとにお話してきました。私たちの話が、みなさんが将来の進路を考えるうえで、少しでも参考になればうれしいです。
静聴、ありがとうございました。

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