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GRM履修生活動レポート

アフリカの奇跡 ルワンダの現状と課題-現地の声から-

グローバル・スタディーズ研究科 乾 敏恵

開催日: 2014年4月11日 (金)
場所: 今出川校地(烏丸キャンパス) 志高館 SK119
講師: 三戸(みと) 俊和 氏〔i-Wind Consulting Ltd.副代表〕
三戸 優理(ゆり) 氏〔i-Wind Consulting Ltd. Managing Director〕

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【講演内容】
 アフリカ・ルワンダから環境コンサルタントとして活動されている三戸俊和氏、三戸優理氏をお迎えし、ご経歴やご経験、ルワンダの現状についてご講演頂いた。三戸俊和氏は1996年環境庁に入庁後、2001年に政府の留学制度によりカナダのウォールタール大学にて修士号(応用環境学)を取得。その後内閣官房に出向し、首相の環境問題に対する国会対応等の仕事をされた。どんどん現場から離れる仕事をするようになったことを危惧し、2007年からはJPO(Junior Professional Officer)として約2年半ルワンダのUNDPに派遣された。ごみの処分や気候変動などの環境に関わる分野で活動された。派遣された当初、国連改革の最中であり、予算の使い道が決まっておらず融通が利く状態であった。さらにUNDPや国連という場所で働くことでの、仕事のやり方や進め方、文化がかなり日本とは異なることでのカルチャーショックや、ルワンダでの仕事の進展のスピードについてお話頂いた。そこで2年間という短期間では何も成し遂げられないということで、2009年には環境省もUNDPとも退職し、ルワンダに残って環境に関わる分野で活動されることとなった。

 ルワンダでのプロジェクトとしてごみ処理場の対策が挙げられる。生ごみの発酵によってメタンガスが発生し、火災が起こることがしばしばある。そこで福岡大学や福岡市などが開発した福岡方式を採用することによって、自然に発生した熱を利用することでごみの中に酸素が送り込まれ、上昇気流となってバクテリアの活動が促進され、CO2となる。そのためメタンガスの発生を抑えることができる。福岡方式が導入される前には、毎日処分場に通い、地元の人々と共に火事を消すために活動されていた。現在では月1回ほどだそうである。最近ではアスベスト対策がある。ルワンダでアスベストが禁止され、半年以内にアスベストを取り除くことが決定された。アスベストは人体への影響があるため、他国のグループと共にアスベストの除去に対するプランを策定した。これがきっかけとなり、住宅局で週2日働いている。現在は京都大学の博士後期課程に在籍し、持続可能な開発とリーダーシップについて研究を行っている。

 三戸優理氏は環境事業団で廃棄物関連の仕事をされ、カナダのウォールタール大学にて修士号(応用環境学)を取得された。ルワンダではまず初めにジェトロファの木の実証実験を行った。この実からオイルが取れ、農民が代替燃料として使用可能かどうか調べることから始まった。また、このプロジェクトと同時にバナナの繊維(廃棄物であるバナナの幹)と綿を混合したテキスタイルを活かした産業育成のプロジェクトを開始した。原料から最終製品までの一貫した生産を行うことなり、多摩美術大学と協力し、TICAD IVの際にはヴィクトリア湖周辺国の大統領にバナナの繊維で作ったハッピを配った。2~3年の時間を掛けて手作業から行っていた織物を最終的には織り機を使用し、布を作成するところまで行った。この他には環境ドキュメンタリー番組のリサーチアシスタントなどのサポートを行った。さらにTICAD IVの際にはバスケットの日本への輸出ビジネスを行った。バスケット作成の組合では小学校を卒業していない女性やHIV陽性の女性など、社会的に弱い状況にある女性を主に生産者として組織された。2011年にはバスケットの開発促進、ジェトロファの実証実験やリンゴ栽培の農業投資、環境コンサルサービスを主な柱としてi-windを立ち上げた。
 

【得られた成果など】
 三戸俊和氏、三戸優理氏のご講演をお聞きし、ルワンダで活動する上で特に重要だと感じたことが3点ある。この3点は最後に紹介するお二人からのメッセージと重なる点があるが、自身の経験を踏まえて述べたい。
 1点目は現地で信頼のおけるパートナーをみつけ、研究を進めることである。パートナーがルワンダトップといわれるような大学出身者であっても、信頼がおけるかどうかは難しい。そのため信頼できる人から紹介され、交流をしていくなかで見極めることが重要だと自身の少ない経験の中でも強く感じるところである。2点目は忍耐である。日本では1週間で済むようなことが、現地では1か月、2か月と時間がかかる。こちらが働きかけても、結局のところ進まないものは進まない。そこで忍耐をもって物事を進めることが重要であると痛感する。最後は女性として活動する上で学位を持っていることの重要性である。トップダウンであるルワンダでは、自分よりも目上の人、特に学位を持っているというだけで、急に態度が一変するということがある。学位を持っていることで、相手と対等に付き合っていけるかという疑問はあるが、仕事や研究を進める上で学位を持っていることは重要だと感じた。

 以下では講演してくださった後で頂いたメッセージを紹介したい。
1. アフリカにおける男尊女卑
アフリカでは未だ男尊女卑が激しい。特に若い女性は軽んじられることが多いので、きちんとした専門技術を身につけてアフリカと関わることが有効である。

2. 課題:現地で信頼できる有能なパートナー探し
信頼できるパートナーが見つからないと何らかの事業を実施し、目標を達成させるのはアフリカでは極めて困難である。

3. 新陳代謝の激しい「かさぶたの周縁」のような環境に身を置くこと
「かさぶた」は少し痛痒いく、そのような環境に身を置くことで自信を伸ばしてくれると考えられる。そのため、そのような環境に飛び込んでいく心意気が大切である。ただし、かさぶたの中心のように、はがすと出血してしまうような負荷をかけるようなことや、かさぶた以外の日々の生活は楽だが何も刺激が無いような環境などは勧めない。

4. 外国語の習得は早期に
外国語の習得は早ければ早いほどよい。また、言語そのものだけでなくその言語に附随した文化にも早く触れることが大切である。例えば、欧米の人が仲良くなるパーティーではどんな話題が出るかということを知っているだけで、関係構築に要する時間が変わってくる。

5. 幅広い「好奇心」や「立ち軸」を持つこと
変化の激しい現代に柔軟性をもって対応するには幅広い好奇心を持つことが重要である。「自分はXXをやっている人である」と生涯一貫して説明できるような「立ち軸」、つまり「専門性」をしっかり身に付けることが大切である。

6. 変えられることに注力する
自分が変えられるものは何で、変えられないものは何かを見極め、変えられることに注力することが大切である。例えば、ある提案を理解してくれない他人を恨むよりは、自分の提案力を鍛えなおして新しい視点から提案をする(変えられる方の自分の改善に力を注ぐ)ことが大切である。

 この6点は、今後私たちがアフリカ以外、もちろん先進国や開発途上国、新興国など海外で活動、仕事、研究を行う上で非常に重要な点であるといえる。これらのポイントを忘れず、自身の研究に取り組んでいきたい。


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