GRM Students’ Reports
GRM履修生活動レポート
GRMプログラム成果報告書
総合政策科学研究科 趙 衡範
2021/03/26
2014年から同志社大学のGRMプログラムに参加し、2021年に博士過程を修了する予定である。GRMプログラムは学問的研究だけでなく様々な社会問題にもチャレンジする機会を与えてくれた。何よりも、GRMプログラムによって様々な分野の研究者と協力し、たくさんの貴重な知識や経験を得ることができた。
当報告書ではGRMプログラムを通じて、得られた知識と経験、そして、博士論文やこれからの私のキャリアに及ぼした影響について紹介する。
第一に、初めて参加したGRMプログラムは2014年3月5日から3月12日まで行われたトルコでの現場実習であった。トルコとシリアの国境にある難民村の悲惨な現実に大きくショックを受け、シリアの難民を支援しているトルコNGOの活動が「寄付とボランティア」という私の研究テーマとの共通点を持っているということを直接見て、聞いて、経験できる大切な機会を得られた。この経験によって国際的協力活動に深い興味を抱くことになり、2015年から知人と共にLighty Japanという、ケニアの貧困子どもを支援するNGOに、募金やイベントを企画するスタッフとして参加するきっかけになった。
第二に、政策科学を専攻した私にとって理工系の授業や実習、また 理工系の学生との協業・研究活動は、豊富な経験を与えてくれた。GRMコモン演習は、理科の学生とチームになって、カンボジアという開発途上国を対象にし、政治・宗教・社会インフラ・教育・農村の発展・貧困の減少などにまつわる実際の社会的課題を解決するためのセミナを行った。情報収集から問題の分析、対応策の考案をするためにチーム員は各自の専攻の特色を反映し、一つのプロジェクトを企画した。実は、全ての授業が英語で進められていて、英語の実力が多少足りない私には容易ではない経験だった。しかし、コミュニケーションに対する努力によってGRMコモン演習を無事終えることができ、この経験は言語・専攻が異なる研究者と共に働けるという貴重な経験を得ることができた。
第三に、GRMインターンシップは、今まで興味を持っていた国際協力分野のプロジェクトに実際に参加し、研究する機会を得られた。ここでは、GRMインターンシップについて紹介する。
2016年2月4日から10日まで、フィリピンマニラ市においてインターンシップを行った。本インターンシップは、次の日程通りに行われた。4日に現地到着、5日に現地ソーシャルワーカーによる概要説明(パラニャクスラム街の形成経緯について、住民の生活実態、支援内容、調査時の注意事項など)、6日に現地調査①(パラニャクスラム街の社会的環境を中心に)、7日に現地調査②(貧困児童の日課観察と家庭訪問)、8日に現地ソーシャルワーカーに対するインタビュー調査(支援内容および支援実施上の課題について)、9日に研究調査成果およびまとめ、10日に帰国である。インターンシップ先であるパラニャク地域は、2015年4月まで約120世帯(約500名)が共同墓地を生活の場として暮らしている最貧困層の地域であり、絶対貧困の深刻さと残酷さがよく見られるところである。2015年4月からは、市の政策によって共同墓地から他の地域に移動して暮らしているが、その時に敷地(雨が降ると、膝まで水が満ちてくる敷地)と角材4つだけを提供されたという。彼らが抱えている問題としては、衣食住や性問題は言うまでもなく、最も至急なのは医療問題であった。大人、子ども、新生児を問わず、その地域に暮らしている全員が衛生問題に漏出されており、衛生や何らかの事故で医療機関に行かないといけなくなったにもかかわらず、医療機関に足を運ぶ人は少ないことが現状であった。その背景として、貧困層の人たちに対する差別や先入見などがあるという。多部分の人が仕事をしていないことが現状で、市は、彼らの自立向上のために、真面目に道端を掃除する世帯(16世帯のみ)に対して家を建てる時に必要な人件費や材料を支援していた。しかし、今晩に食べるものがないことが現実であるため、市からもらった材料を売ってしまって未完成の家が多かった。インターンシップに協力したカトリック団体は、韓国から派遣されている団体で、2名のシスターが活動している。2010年から活動を始め、最初は緊急医療支援と食事支援を中心に活動していた。現在は、奨学金支援も行っており、40名の子どもに対して一週間あたり200ペソ(約500円)を現金支援しているが、交通費と1日20ペソがかかる間食費(自腹で、食べれないから萎縮されるという)がないため、学校に行かない子どもが多い。支援を行う上で、最も大変なことは、英語とタガログ語(現地語)が分からないと支援ができないといった言語問題と、自立に対する本人の意思をどうすれば沸かせるかといった自立モデルの不在問題が至急である。インターンシップの成果は大きく三つである。まず、発展の途上にある新興国においてNGOが貧困など、生存の危機に瀕する過酷な状況にある人々に寄り添い、地域に人びとと共に困難を打開する知恵を育むことができた。次に、研究プロジェクトへの調査員派遣を通じて、フィリピンの社会問題に対してGRMで学んだ知識を活用し、対応策について議論することで、ファンドレイジング専門家になるための国際協力のスキルを磨くことができた。最後に、フィールドワークの経験は、今後、フィリピンで貧困問題を解決するために活動したいという強いモチベーションに持つきっかけになった。そして、現在、このプログラムに一緒に参加した他の研究者と共にフィリピン・セブ島を現場とし、貧民街の貧困問題を解決するための社会的企業の創業プロジェクトを準備している。
最後に、博士論文である「個人寄付活性化政策に関する研究」の執筆過程で、GRMプログラムは大きな影響を与えた。GRMフィールドワークとして寄付の先進国であるイギリスとニュージーランドに行き、NPO機関に訪問したことや現地大学の専門家との聞き取り調査を行った。また、国際学会で発表することによって各国の寄付文化及び寄付関連制度に対して研究する機会を得られた。特に、国際学会で世界各国の研究者と学術的交流を実施したことは、博士論文の執筆する上で、多様な材料として役割した。
結論として、私が博士論文を完成し、NPO領域で寄付の専門家として活動することができた理由は、上述したGRMから得られた知識や経験のためである。